下坂速穂(「クンツァイト」「秀」)一羽づつゐる鳥籠や初昔
母の背を越えかねてゐる春著かな
雪囲しかと亀甲結びして
岬光世(「クンツァイト」「翡翠」)鈴の紐ぎいと唸りし初御空
竹筒の太きに独楽の坐りたる
化粧せぬ皺のゑまふや初鏡
依光正樹(「クンツァイト」主宰)皆とほる門のあたりや冬構
母のもの豊かに使ひ毛糸編む
枯るる中青きがつのる冬の川
この道を歩いて淡し迎春花
依光陽子(「クンツァイト」)歳晩の棚の奥なる種袋
餅配了へて鳥の餌摺つてをり
この鉢の苔こそよけれ年の梅
元日の艶のなくなるまでの街
水岩瞳非武装を一笑に付す年男
九条の論議の果ての初湯かな
立憲と護憲は違ふ初日記
会ひたしは美辞麗句かも年賀状
恋文も紙袋ごとどんどかな
竹岡一郎日溜に稿置く仕事始かな
かまくらに膝抱へたりフィリピーナ
初鳩や花街の真ん中の寺
初護摩のほむら大悲の音はぜて
鬼は陽に沐せり役行者の忌
木村オサム風呂桶の底の「ケロリン」年新た
初鏡頭の中に波の音
ぽっぺんや双子のひとりだけが舞ふ