2019年3月1日金曜日

平成三十年 冬興帖 第八(真矢ひろみ・堀本 吟・内村恭子・青木百舌鳥)



真矢ひろみ
御講凪みな悪人にして笑顔
テロありし大路を渡る冬の月
煮凝りや液化せし魂見える化す
瞑りゐて三日とろろを泳ぎけり
箱庭にけもの道引く春隣


堀本 吟
日の射すや紅葉散る森ふかく行き
片時雨電話ボックスただ独り
そらいろに翳る皇帝ダリアの域
冬に咲くダリアも仮のあはれかな


内村恭子
二日はや川辺はアスリートばかり
氷壁を数歩穿ちてまた静寂
猟銃音ノイシュヴァンシュタイン城の朝
アイスホッケー防具外せば細き肩
無念の帰還とアノラック飾られて


青木百舌鳥
金剛の砥の粉にまみれ霜の舟
PRINCESS PRINCESS(プリプリ)は我になつかし公魚釣
道わたりくる公魚の釣師かな
生きてゐるものとは見えず暖め鳥