岸本尚毅カンと鳴る遠くかすかに除夜の鐘
空見つつ坂を上るやお元日
ステツキの人の頭上を初鴉
なまけもの檻になまけて松の内
日の暮のストーブ赤き投票所
口開けて腹這ふ子規や日脚伸ぶ
待春のまばらに立てる薄の穂
前北かおる頰撫づるほどの夜風や梅の花
団地から夜のカレーのにほふ梅
大久保の夜のはづれの梅の花
杉山久子六羽中二羽こちら見る初雀
バレンタインデー人身事故とアナウンス
六十年の御髪みだるる雛かな
白石正人春浅し胞衣処理場の煉瓦塀
風船を離してわれの位置定む
摘草や跪かねば及びえず
潮引くや若布の傷に背をむけて
目刺より藁抜く小さき胸騒ぎ
包丁の切れ味わるき遅日かな
ふけとしこうつすらと煙の匂ひ除夜詣
正月をゆらゆらと運ばるるもの
初戎赤き実残る蟻通し
パピルスの芽立ちに風の湧きにけり
沈丁花単2電池が二本要る
春暁の夢の半ばへまたも獏
神谷 波水鳥は無心に泳ぎ雪霏々と
年迎ふくねくね道もまつすぐも
太箸や父はぢぢいに子はちちに
頼もしきものに四日のふらいぱん
松過ぎの膝を抱へて日向ぼこ
紡ぎたくなる立春のちぎれ雲
恋猫の必死の声や遠ざかる
刳りたるやうな残月冴返る
ゆきあたりばつたり麺麭屋暖かし
爪先に島影浮かぶ薄霞